講師紹介
講師プロフィール

テンプル大学ビジネススクール教授
小田部 正明 (コタベ マサアキ)
The Washburn Chair Professor of International Business and Marketing,
The Fox School of Business and Management, Temple University
ミシガン州立大学にてMBAおよび博士号を取得。専門は国際マーケティング。ミズーリ大学、テキサス大学にて教鞭を執った後、1998年より現職。米国と日本に加え、ドイツ、フィンランド、コロンビア、メキシコなどのビジネススクールでも教えるなど、国際的に活躍。JAIMS留学プログラム「East-West Knowledge Leaders Program(EWKLP)」では、「グローバル・マーケティング」の講師を担当。
「違い」を包容できる人こそが、次代のビジネスリーダーです。

出会いが、私を「グローバル・マーケティング」の研究へ導いてくれた
私は現在、フィラデルフィアを拠点に、世界中のビジネススクールで教鞭を執る生活をしています。普段は英語オンリーの生活ですが、生まれも育ちも茨城県の水戸市です。中高校生の頃、太平洋に浮かぶ何隻もの船を見て、海の向こうへ思いを馳せたことを覚えています。それが国際経営学への興味の始まりでもありました。そんな若き日の私にとっての運命的な出来事が、ひとりの研究者との出会いでした。
1973年、千葉大学2年生だった私の前に、アメリカの大学でMBAを取得してまもない血気盛んな経営学者・村山元英(もとふさ)先生(現・国際経営文化学会会長)が現れたのです。学生が二百人入る大教室で、村山先生の「経営総論」の講義の内容に興奮した私は思わず手をあげて質問をしていました。その数日後、キャンパス内のトイレでばったり出会った私に「君は面白い。明日から3年生、4年生にまじって私のゼミに参加しろ」とおっしゃった。ゼミは通常3年次からですから、2年生は私だけです。先生や先輩たちと議論を交わしながら国際経営を学び、4年生になったとき、「君は日本には向かないな。卒業したら、アメリカへ行け」と。アメリカの大学でMBAを取得しろとアドバイスされたのです。
その頃の私はいつも、「もっと“現実味のある経済学”を勉強したい」と思っていました。そんな私に「マーケティング」という言葉を教えてくれたのが村山先生だったのです。いまから30年以上前、日本にマーケティングの概念が入ってきたばかりの時代です。「マーケティングって何だろう。なんだか、すごく面白そうだ」。私は働いてお金をためてアメリカの大学へ行くことを決意し、3年後の1978年、25歳のときにミシガン州立大学へ入りました。日本におけるマーケティング研究の先駆者である嶋口充輝(みつあき)先生(現・日本マーケティング協会理事長)が同大学で経営博士号を取得していたことも知っていたので、ここしかないと思ったわけです。
いざ留学してみると、当時のアメリカはものすごいインフレでした。用意していたお金ではすぐに足りなくなり、キャンパス内の食堂で毎夜、皿洗いのアルバイトをしながら、嶋口先生の恩師でありマーケティングの権威であるウィリアム・レイザー教授のもとで2年かけてMBAを取得しました。その2年間のなかには、「ELC(The English Language Center)」での半年間の英語特訓も含まれます。 その後は、コンサルティング会社で実務経験も積みながら、レイザー教授のすすめで、大学のビジネススクールで博士号を取得。ミズーリ大学、テキサス大学で教鞭を執った後、1998年から現職です。JAIMSの「EWKLP」の講師には2008年に就任しました。

世界17の都市で暮らし、
“現実味のある経済学”探究へ猪突猛進
“現実味のある経済学”を追求する私は、これまでフィンランド、ドイツ、オーストリア、ノルウェー、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、チリ、パラグアイ、コロンビア、中国、韓国、インドネシア、トルコといった世界各国の17の都市に住み、人種も文化も価値観も異なる国・地域でのマーケティングをダイレクトに学んできました。そして、掘り下げたのが「グローバル・サプライチェーンマネジメント(SCM)」の研究でした。なかでも「グローバル・ソーシング・ストラテジー」という本を発表するなど、「ソーシング(Sourcing)」という概念を学問化することに早くから力を注いできました。ソーシングとは、たとえば多国籍企業が研究開発、製造、販売といった各部門のインターフェース、すなわち、つながりを高度にマネジメントすることを指します。もしかしたら、「ソーシング(Sourcing)」という概念を、国際経営学に本格的に持ち込んだのは私かもしれません。さまざまな都市で暮らすことを通じて、異なる風習や価値観の国へ商品を売るためには、どんな戦略が可能かを、肌で知っていることも、私の大きな強みといえるでしょう。

完璧な理論に、驚きに満ちた実例を肉付けして、
楽しく伝えたい
世界には、想像を超えるほど面白いグローバル・マーケティングの成功事例がいくつもあります。そうした実例を、理論に肉付けして、楽しくグローバル・マーケティングを解説するのが、私の講義の特徴です。17都市で実際に暮らした経験をもとに、私自身が心を動かされたビジネスケースを現実味と臨場感にあふれるビジュアルなストーリーにして教えています。
たとえば、アイスランドでバナナを栽培し、ドイツで販売している成功例があります。アイスランドでバナナ?はまさに信じられない話ですよね。でも、事実なんです。アイスランドは少し地面を掘れば、湯気が出てくるほど地熱が高い。北極圏の近くに位置していますから、夏は白夜で長時間、日差しが降り注ぎます。その熱と日差しをビニールハウスで維持すれば、良質なバナナができるんです。それを、西ヨーロッパ諸国の中で唯一アフリカに植民地をもった経験がなく、バナナに対する憧れが強かったドイツ人に販売しているのです。中南米やインドから輸入すると時間がかかりますから採れたてではありません。でも、アイスランドからドイツへなら一日半で届く。樹で完熟した香りも味も最高のバナナは、ドイツではパーティーのときなどに欠かせない贅沢なフルーツになりうる訳です。
日本の企業にも、世界のさまざまな国や地域を相手に、グローバル・マーケティングに成功した好例があります。たとえば、自動車を本格的につくりはじめた頃のホンダがそうです。2輪車メーカーからスタートしたホンダは1980年代前半に、輸出先の国や地域に合わせたクルマづくりをする力がありませんでした。だからといって、同じものを、同じように売ろうとしても成功できるわけがありません。どうしたか?マーケティングによって、適応化(アダプト)をさせたのです。
日本では「家族のクルマ」として売り出したセダンを、アメリカでは「燃費が良い、通勤用のセカンドカー」、モータースポーツ・F1での活躍で認知度を上げていたヨーロッパでは「BMWの半値で買えるスポーツセダン」というポジションを提示することで、市場を拡大したのです。
企業のグローバル化を図るために、商品のローカリゼーションをマーケティングで可能にする。企業にとって「グローバリゼーション」と「ローカリゼーション」は対立するものではなく、融合すべきものであるということが理解してもらえるのではないでしょうか。これぞ、国際経営における一石二鳥です。

JAIMSから、「違い」を包容できる
次代のビジネスリーダーが生まれるはずです
昨秋から講義を担当することになったJAIMSの「EWKLP」には東西南北から生徒が集結します。3カ月という短い期間で、グローバル社会で求められるインテグリティ、対話力と実践力を総合的に高めることを目指す彼らのやる気はとても素晴らしいものです。異なる社会、経済システム、価値観で暮らす人間同士ですから、共に学んでいくほど、違いが浮き彫りになってきます。それこそが「EWKLP」最大の魅力といっていいでしょう。違う者同士が切磋琢磨しあうからこそ、自分が見えてくる、自分には何ができて、何が足りないかがクリアになるのです。そのプロセスは、私自身が、さまざまな国や地域で暮らしながら、学んできた経験と重なります。
大切なことは、違いを認めて、受け容れること。コンバージェンス(convergence=一体)とダイバージェンス(divergence=分岐)を知ることが大事。人生と同じです。
また、JAIMSはハワイのなかでもホノルル郊外という理想的な環境にあります。世界中で暮らしたことがある私が最も好きな場所が、実はハワイなのです。東西が出会うJAIMSで、3カ月間、集中して、将来への重要なステップをつかんでください。そのために、私は、自分が知っている無数の事例とともに、まさに“現実味のある経済学”といえる、生きたグローバル・マーケティングの本質を皆さんに伝えたいと思います。違いを包容して、未来を切り拓く、次代のビジネスリーダーを育てるために。





