米国見聞録 JAIMS支援部スタッフ執筆
005. 車の運転に対する考え方の違い (2009/8/18)
「ブレーキを踏むな!」運転免許を取得する際、歩行者が道路を渡ろうとしていたので、車を減速しようとしたら、教官にこう言われたのです。それも、かなり強い調子で言われたので、とても驚きました。
アメリカで運転免許を取得するのは、非常に簡単です。州によって運転免許取得の方法は多少異なりますが、たいていは筆記試験を受けて、合格したら仮免許が発行され、最後に実技試験を受け、合格したら晴れて免許証が発行されます。日本では教習所でたくさんの授業を受けるのに対し、アメリカでは筆記試験を受けるための教材が無料で配布されており、自己学習で試験の準備をするので、教習所へ行く手間が省けます。更に、この教材を配布している運転免許試験センターは、あちこちにあります。私が行った運転免許試験センターは、ショッピングセンターの一角にありました。現在では、インターネットでダウンロードすることができるので、教材を取りに行く手間も省けます。
筆記試験の内容は、距離に関する言及が、メートルではなく、フィートやマイルである点を除けば、日本とそれほど大きくは変わりません。試験問題は、引っかけ問題がほとんどないので、素直に回答すれば大丈夫です。私が受けたミネソタ州の運転免許試験は、コンピューターがランダムに問題を出し、タッチパネル式の機械を操作しながら問題を解く形態でしたが、45問(全出題数50問の9割)正解した時点で終わりました。確か1問しか間違えなかったので、私は47問目から50問目を回答することなく、筆記試験を終えたのです。全問題を解いて、基準点を上回ると合格になる日本のやり方とは対照的でした。
私の場合、渡米後まもなく免許を取得したため、実技試験を受けるために車を貸してくれる知人もいなかったので、運転免許取得パックに申し込みました。これは2時間コースになっており、前半の1時間は練習で、公道を運転しながら、教官が実地試験について、いろいろとアドバイスしてくれます。後半の1時間は運転免許の実地試験で、教官の車を使って試験を受けます。教官にブレーキを踏むなと言われたのは、この前半の練習の時でした。
運転したのは近所の道路でしたが、その道路は大学のキャンパスを突き抜けており、道路を隔てた反対側のキャンパスへ行こうとして、車が途切れるのを待っている学生数名が見えました。たまたま道路を走っていたのは私の車1台だけでしたが、教官が同乗していたこともあり、学生を渡らせてあげることにしました。そのために減速しようとしてブレーキを踏んだ瞬間、教官が「ブレーキを踏むな!」と強いトーンで言ったのです。歩行者を優先させようとして、教官から注意されたので、私はとても驚きました。
理由を教官に聞いたところ、次のように教えられました。もし学生が横断歩道を渡ろうとしていたのであれば、運転手は学生を渡らせてあげる必要がある。しかし今回は、横断歩道以外の所を渡ろうとしていたので、道路は車が優先なのだから、学生を渡らせてあげる必要は全くない。それよりも、彼らを渡らせようとしてブレーキをかけることによって、不用意な渋滞を作り出すことになるかもしれないし、場合によっては後続車を危険な状態に陥れることにもなりかねない。だからブレーキを踏まず、そのまま走り続けなければならないとの事でした。
更に私は、もし学生が道路を渡ろうとしたらどうするのかと尋ねると、遠慮なく運転し続けて良いとのことでした。道路は車が走るところであり、そこを歩行者が渡ろうとするのは、歩行者の自己判断であり、例え事故になっても車に非はないとの説明でした。日本では横断歩道のない道路を歩行者が渡ろうとして事故になっても、過失割合の大半は自動車側になりますが、アメリカでは歩行者の過失になるのです。社会生活に必要な自動車の利便性を損なわないようにしながらも、横断歩道では歩行者を守るという法体系から、アメリカの自動車社会の一面が垣間見た気がしました。

法律や人々の考え方も自動車が中心になっているアメリカ
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